矢には相反するとも言える2つの宿命(?)があります。1つ目は、「弓矢という道具の命中精度の大部分を矢が担っている」事です。そう書くと弓本体を軽視しているかの様に思えるかも知れませんが、そうではありません。弓矢は基本的に複数の矢を1本の弓で射ちますので、弓は同じものを使います。それに対して矢は複数本射つということは、全ての矢を同じクオリティやコンディションに保っておかないと、高い射撃精度は求められないからです。安定した命中精度を実現させるためには、高い「同一性」を求められるのが矢なのです。
2つ目の宿命は、「矢は消耗品である」という事です。昔の戦であれば、多くの矢が使い捨てになったでしょう。海外で行われるハンティングの際も、獲物に命中しても外れても、矢が破損することは珍しくありません。競技であれば簡単に壊れることは少ないですが、それでも的を外したり、継矢と言って的に刺さっている矢に命中させると壊れることもあります。それは上手くなればなるほど発生しやすい現象ですので、やっぱり消耗品なんです。
ですから、状況や競技スタイルで違いはありますが、1〜2ダースぐらいは全く同じコンディションの矢を揃えておきたいものです。
矢が自分の思った所に当たらなかった時、自分自身のミスだったのか?それとも、道具(矢)が悪かったのか?
矢がキチッと同じコンディションで揃っていれば、そんな事を考える事無く、自分の技術向上に務めることが出来ます。本気で上手くなろうとした時には、良い道具を使うことが上達の近道です。
自分で矢を組み上げたり、一から作っている時は、綺麗に飛ぶように、よく当たるように願いを込めながら丁寧に作ります。その矢を射つ際は当たって欲しいという思いと、壊れてしまう覚悟を持って、弓に番(つが)えます。
その後〜発射を終えるまでは、そのような思いは「雑念」となりますので切り離しますが、長く使ってきた矢ほどその1本1本にはいろんなドラマが詰まっていますので、クイーバー(矢筒)から抜き出した時は感慨深いのです♪